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Thursday, August 06, 2009

雑記

疲れると、ネットにもものをあまり書かなくなる。現実世界でも口数がへり、あまり人と会話したくなる。
そんなときにこのMontemor-o-Novoの完全ほったらかし二週間レジデンシーは最高の環境である。

ともあれ、忘れないように色々書いておこう。

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ルーマニアのレジデンシー(Jardin d' Europe Romania)はなんとか無事おわる。

結局困ったのはオーガニゼーション。最初の週にプロジェクターが必要だから来週もってきて、といい、向こうが特に「No.」ともいわないのでくるだろうと思っていたらこない。二週目の始めに「機材がないと進められない、困る、水曜までにもってきてくれ」といって到着したのが日曜日、つまり二週目の最後。それも「新しいプロジェクターだからちゃんと扱ってくれないと困る。テクニシャンがいないところで使わないでくれ」というので、さすがに「これはshowじゃなくてリサーチなんだから、機材使えなくちゃ何も出来ない」というと、渋々まかされる。簡単にいうと、アーティストにとって何が必要で大事か、そういう視点がない。

(用意できないなら、さっさとNoといってくれればそれでプランの変更はできるが、言わない限りオーガニゼーションがもってくる可能性があるのだから、こっち側にもつかわないといけないという責任が発生する。しかしながら使うのはリサーチで、実際に写真や音を集め動画を編集する作業は極めて機材(空間を構成する要素)に依存するのだから、到着がおくれると、こちらは作業時間を無理矢理圧縮して、「なんとかそれらしいもの」をとりあえず作ることになってしまう。これがクォリティーを追求したいアーティストにとってどれだけのフラストレーションとなることか…。)

つまり簡単にいえばオーガニゼーションの経験不足。一緒にいたポルトガル人アーティストにいわせれば、「だから僕らが教育していかなければならいんだよ」ということ。まるでそうだが、三週間もこうした機会に恵まれながら、ただイライラしてばかりで終わってしまったのは実に歯がゆい。

しかしプレゼンでの緑色の石を使った短いインプロはそこそこ印象もよく、これは新作にそのまま使うことになるだろう。

それから食事は極めてモチベーションをおとした。マンマリーガ(とうもろこしのペースト/Mămăligă)とサワークリームだけの夕食というのは、いってみれば日本の醤油かけご飯である。こんなのが週に二回も三回もやってくる。困る。

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CCBでの公演は無事終わる。ともかく日曜日、しかも夏休みで、観客が山のよう。家族連れだらけで子供がうじゃうじゃ。地面を這い回ったり、でっかい門によじのぼったり、カフェのいすをふりまわしたり、庭の噴水に石を投げたり、そういうことをするだけで、やっぱり皆よろこんでくれる。こういうことは簡単なことだけど「アーティストしかやらないこと」で、実際に見ると新鮮な驚きにかわる。

ただダンス的にはもうちょっとテクニカルにせめてよかったと反省。お客の多さに圧倒されて、少々あせってしまったとおもう。

今回のパフォーマンス、日本の状況に照らし合わせるなら、新国立劇場の屋外スペース(そんなのあったか?)でフランス人ダンサーが日曜日に無料インプロ・パフォーマンスといったら理解してもらえるか…。

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そして今Montemor-o-Novoでのレジデンス。今回はO Espaço de Tempo(お城)ではなく、Oficina de Convento(修道院)。
Visual Artistのコミュニティの施設で、2007年に彼らが主催するフェスティバルに呼んでもらってからの縁。

広いスタジオに、初日から必要な機材はすべてそろっている。「何か気をつけることはある?」とダイレクターに聞くと「君は必要十分気をつけているよ」と言われる。

以前も書いたが、僕はコンテンポラリーダンスにおけるマテリアルへのインスタントな姿勢があまり好きでなく、だからこそ、ここのアーティストがとても好きだ。木を彫り、土をこね、鉄を曲げて作品をつくっていく、そういう人々の真ん中にいると背中がシャンとまっすぐになる。

といっても、アレンテージョののんびりとした空気の中で時間をかけて作業をする。ポルトガルのコーヒーはいわずもがな、ここではカキーンと冷えたビールも60centでのめてしまう。煮詰まったらカフェにいけばいい。

ともかく、焦って「それなりのナンカ」をつくるのではなく、まっすぐに自分がやりたいことをしっかりとここで整理したい、それがここならできると今感じている。

Wednesday, July 15, 2009

visualityとダンスと、サッカーと

週明けはなんかとても疲れていたのだが、大分調子がでてくる。こういっては何だけど、やっと作品を作る気分になってきた。

石をスプレーで緑色にぬっていると、ここで働いているおばさんやら、観光客のおじさんやらが興味深げに覗き込んでくる。
野外で振り付けをつくっていると気味悪がってあまり声をかけられないのとは対照的。やっぱりfine art系は理解が及ぶから、支持を得られ易いのだな。

もともと僕は自分でテキストを書いたり、映像を編集しているので、わりとこういう具体的なマテリアルに自分で手を加えていくのには抵抗がないのだけど(一応はセノグラフィーも少しかじった)、ダンス・アーティストでそういう人はあまりいない。
多いのは、ありものの音楽やテキスト、下手すると誰もが知っている古典的な作家、作曲家、ポップ・ミュージシャンの曲などを、ポンッともってきて、それっぽい振り付けをつくって、そのまま発表してしまう(あるいはコラボレーションと称して、ヴィジュアル・アーティストにおんぶにだっこでマテリアルをつくってもらい、さも自分がつくったもののように振る舞う)。ダンスは総合芸術だから、こういう感じでも成立するのだけど、それで「アーティスト」と言うのはどうなんだろう、と僕はあまり好まない。
実際、ヨーロッパや日本のコンテンポラリーダンスがダメになってきたのは、アーティストのこうしたマテリアルに対するインスタントな扱い方にあるのではとうすうす思っている。自分で手を汚して作ったものかどうかは、お客さんに一発で見抜かれる。

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テラスでコーヒーを飲んでいると、3,4人ぐらいの日本人のグループに声をかけられる。こちらのプロフェッショナル・リーグでプレイしていた元フットボール・プレイヤーの方と、ブカレストで日本語教師をされている方々。特にサッカーのことなんて何にも知らないから、日本のプロ・リーグでもプレイされていたという彼の話はとてもためになった。スポーツ選手というのも芸術家と一緒で、仕事があったりなかったりだから、本当に大変なものなのだと、しみじみ感じる。

Monday, July 13, 2009

ルーマニア、二週目

ルーマニアでのレジデンシー、二週目となる。
一週間目は、ポルトガルでの生活に慣れた身体に、質素な東欧の食事を合わせること、その苦難と、オーガニゼーションに対するフラストレーションをどうハンドルしていくか、そういう、大変な一週間だった。うん。

色々思うところはあるが、ここで活動するポルトガル人アーティストがいった、「ルーマニアという小さなコミュニティにおいて、ひとつひとつの文化機関が(その規模に時に不釣り合いなほど)奇妙に力を持ちすぎることがある」という表現は誠に意を得ていて、日本の状況とかぶる。

作品は、「他者」を主眼においた「The Other/I don't know you.」プロジェクトの続きで、とりあえずプラスチックカップの代わりに石に笑顔を描いていくことにした。それはルーマニアの極めて貧しい家々、ブロックだけを積み上げて、外装もない家々のイメージと重なる。あるいは、普段単に足の下に踏み歩き、まるで気にも留めないその存在に「表情(顔)」があるということは、このプロジェクトの根幹にある、資本主義がもたらす疎外の運動への批判的立場を表すことも担っている。